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幅 : 9cm×9cm 高さ : 11.3cm
本作は、雨上がりの澄んだ空を思わせる淡い“雨過天青”の青釉をまとい、自然石のような自在なフォルムを備えた一輪差しでございます。轆轤成形の途中でわざと胴を潰し、さらに手捻りで凹凸を加えることで、岩肌の起伏や水滴が流れた跡を連想させる有機的な陰影が生まれております。口縁はあえて不定形に割り残し、薄掛けの釉下から銀鼠色の鉄縁(てつぶち)がのぞくことで、静かな青の世界に侘びた輪郭を与えております。
雨過天青の発色
鉄粉を調整し、高温還元で焼成後、終盤のみ酸化雰囲気へ切り替える「還元落とし」を採用しておられます。これにより赤味を帯びない澄明な青が得られ、釉内部にわずかな乳濁層が生まれて奥行きを演出しております。
氷裂貫入と鉄点
胎土と釉層の膨張係数差をきわめて小さく抑え、目立つ貫入を抑制しながらも、凹部には釉溜まりが生じて細かな貫入と鉄点が浮かび上がります。年月とともに花水や空気中の湿気で霞が入り、景色が育ちます。
鏡面仕上げ
焼成後に低温還元で追い焚きを施し、釉表層を再溶融させることで、柔らかな映り込みと手に吸いつくようなしっとりとした艶を実現しております。
青瓷の端正な静けさに、あえて偶然性と崩しの動きを重ねることで、「静中に宿る生気」を表現する――これが多賀井正夫様の近年のテーマでございます。宋代龍泉窯の幽玄な青を礎にしながら、日本茶陶が育んだ「景色を愛でる侘び」を現代的に解釈し、自然石を思わせるフォルムへ昇華させております。
床の間では黒塗りの見台や古材板に載せ、斜光を当てて凹凸の陰影を際立たせると、器の景色が一層豊かに映えます。
凹凸に映る光の揺らぎ
斜めから光を当てると、水面のように反射が揺れ、青釉の濃淡が刻々と変化いたします。
鉄縁と鉄点の侘び味
口縁と胴点在の黒味が青を引き締め、古青瓷の面影をそっと漂わせます。
育つ景色
花水や時間の経過で貫入が霞み、器が持ち主とともに呼吸しながら変化いたします。
本作「青瓷一輪」は、澄明な青の静けさと手捻りの躍動、そして鉄縁・鉄点の侘びが共存する“生きた景色”の器でございます。一輪の草花を挿すだけで空間に瑞々しい息吹が宿り、年月とともに器肌がゆるやかに変わる過程が、ご自身だけの物語となって刻まれていくことでしょう。末永くご愛用いただき、四季折々の花とともに青瓷の移ろいをご堪能くださいませ。
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